こんにちは、税理士の岡崎友彦です。
秋晴れの2025年10月10日、私が今年参加する東京税理士会の特別研修「A-Zセミナー」の第1回が開講され、早速参加してまいりました。
このセミナーがどのようなものかについては、以前こちらの記事でご紹介させていただきました。

会場には約50名の受講生が集まっていました。
定員を超える申し込みがあったそうで、税理士の自己研鑽にかける熱意をひしひしと感じる幕開けです。
午前11時に開始。
まずは、オリエンテーション。注意事項の説明。
次に、綱紀監査部からの税理士の「名義貸し」や処分の事例について紹介がありました。


A-Zセミナーとは?

「A-Zセミナー」とは、その名の通り、税理士として必要な知識をAからZまで、つまり法律の根幹から深く学び直す、東京税理士会主催の研修制度です。
その目的は、単なる知識のアップデートに留まりません。「明日の税理士会を担う人材の育成」を掲ています。
税理士に対する社会的な信頼と評価の向上を図り、将来の税理士業界を担うリーダーを育成すること
を目的としています。
定員50名の選抜制であり、全5回にわたる講座では、各分野の第一人者である大学教授や法律の専門家から直接指導を受けます。
日程と講義内容は以下のとおりです。
回数 | 開催日 | 時間 | 科目 | 講師 |
第1回 | 10月10日(金) | 11:00~20:00 | 民法 | 常岡 史子氏(横浜国立大学理事・名誉教授) |
第2回 | 10月17日(金) | 11:00~17:00 | 法制実務 | 橘 幸信氏(衆議院法制局長) |
第3回 | 10月30日(木) | 11:00~17:00 | 租税法 | 神山 弘行氏(東京大学大学院教授) |
第4回 | 11月17日(月) | 11:00~17:00 | 憲法 | 増田 英敏氏(専修大学法学部教授・弁護士) |
第5回 | 11月20日(木) | 11:00~19:45 | 税理士法 | 泉 絢也氏(東洋大学法学部教授) |
- 民法
- 相続や事業承継に不可欠な家族法など、税法の前提となる民法の理解を深めます。
- 法制実務
- 法律がどのように作られ、どのように読むべきかを学びます。
- 条文の表面的な解釈に留まらず、その成り立ちや趣旨から理解します。
- 正確でミスのない税務判断に繋がります。
- 租税法
- 税法の第一人者から、最新の判例や学説を学びます。
- これにより、複雑な税務問題に対しても、多角的な視点からお客様にとって最善の選択肢をご提案できるようになります。
- 憲法
- 納税者の権利という憲法上の視点から租税法を捉え直します。
- 税務調査などにおいて、お客様の権利を最大限守るための理論的支柱を強くします。
- 税理士法
- 税理士としての社会的責任や倫理を再確認します。
- 信頼性の高いサービスを提供し続けるための基盤となります。
刺激的な出会いと学びの場

セミナーの醍醐味は、講義内容だけでなく、そこに集う人々との出会いにもあります。
今回、偶然にも隣の席になった方と名刺交換をさせていただくと、ある議員の先生。
その先生は税理士としてのキャリアもお持ちで、今年選挙にチャレンジされ、初当選されています。
会計事務所のことや議員活動のことなど、様々なお話を伺いました。
特に印象的だったのは事務所の運営についてです。職員の方々が自走できる仕組みが構築されており、業界で問題になりがちな離職なども少ないとのこと。
専門家として、そして経営者として、見習うべき点が数多くありました。
忙しい中、このような研修にも参加されるのは、頭が下がります。
他にも、
経験豊富なベテラン税理士の先生方や、弁護士を兼業されている先生も参加。
グループワークでは、弁護士兼業税理士先生が過去の判例を的確に引用しながら議論をリードする場面もあり、税理士の勉強熱にあらためて感心しました。
第1回講義「家族法」―最高裁まで争われた相続事例

記念すべき第1回目のテーマは「家族法」。
その中でも、相続の最も根源的な論点である「相続人とは誰か」という点に焦点が当てられました。
特に印象に残ったのが、過去に最高裁まで争われた、
ある家族の事例です。
- 事業を営む社長夫婦には、残念ながら子どもができませんでした。
- そこで、弟夫婦との話し合いの末、弟夫婦に生まれた子を、社長夫婦の実子として出生届を提出しました。(この時点で、戸籍上は実の親子ですが、血縁関係は一切なく、養子縁組届も出されていません。)
- 月日は流れ、社長の妻が亡くなります。
- 高齢になった社長が再婚を考え始めました。
- 社長とその子どもの関係が悪化します。子どもからすれば、新しい配偶者が現れることで、将来の相続分が減ってしまう懸念があったのかもしれません。
- 関係が悪化する中で、ついに社長は子どもに対し「お前とは血が繋がっていない。だから相続権もない」と真実を告げてしまいました。
- そして、社長は、親子関係が存在しないことの確認を求める裁判を起こします。
- DNA鑑定の結果は、当然ながら「親子関係なし」でした。
- 裁判所は「虚偽の出生届は無効」との判決を下します。
- 子どもは、「無効な出生届を養子縁組届として転換的に解釈すべきだ」と主張を続けました。
- その矢先に社長が亡くなってしまい、訴えの利益が失われ、法的な親子関係が確定することなく終わってしまいました。
もし養子縁組の手続きがきちんとされていれば…。
血縁だけではない「家族の形」と、法律の厳格さを痛感させられる、非常に考えさせられる事例でした。
まとめ:相続における親子関係の基本

今回の講義で学んだ、相続における親子関係成立の基本は、以下の通りです。
- 母と子の関係
- 出産(分娩)の事実によって法的な親子関係が成立します。
- 父と子の関係
- 婚姻関係にある男女の間に生まれた子は夫の子と推定されますが、そうでない場合は認知によって法的な親子関係が成立します。
戸籍上の記載だけでなく、これらの法的な原則が、相続の出発点となります。
次回のセミナーは、10月17日(金)、テーマは「法制実務」です。
講師は、法律が作られる現場のトップである衆議院法制局長の橘幸信氏。
条文の読み方や解釈について、さらに学びを深めてまいります。
今後も、こうした研修を通じて得た知識を、お客様の資産防衛のために還元してまいります。
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