令和9年分から変わる「青色申告特別控除」の要件見直し

荒川区の税理士、岡崎友彦です。

2026年(令和8年)3月を迎え、現在、令和7年分の確定申告期間の最中です。

今後の申告業務において確認しておくべき税制改正の項目があります。

令和8年度税制改正により、個人事業主の所得税における「青色申告特別控除」の要件と控除額が見直されます。

この改正は、令和9年分(2027年分)以後の所得税から適用されます。

現行制度の概要と、改正後の変更点、そして今後の申告において控除額を減少させないための具体的な対策について解説します。


目次

現行の青色申告特別控除の要件(令和8年分まで)

青色申告特別控除とは、青色申告の承認を受けている事業者が、事業所得や不動産所得の金額から一定額を差し引くことができる制度です。

現行の制度では、記帳の形式や申告の手段に応じて、55万円、65万円、10万円のいずれかの控除が適用されます。

55万円の青色申告特別控除

以下の要件をすべて満たした場合に適用されます。

  • 対象となる所得:不動産所得、または事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
  • 記帳方式:上記の所得に係る取引を正規の簿記の原則(複式簿記)により記帳していること。
  • 添付書類と期限:記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書、および所得の金額の計算に関する明細書を確定申告書に添付すること。控除の適用を受ける金額を記載し、法定の確定申告期限までに提出すること。書面での提出(郵送や窓口持参)であっても適用されます。

65万円の青色申告特別控除

55万円控除の要件を満たした上で、さらに以下のいずれか一つを満たした場合に適用されます。

  • 電子帳簿保存:その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、法定の要件を満たした電子帳簿保存を行っていること。
  • 電子申告(e-Tax):確定申告書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

10万円の青色申告特別控除

上記の55万円、65万円の要件に該当しない青色申告者が適用を受けます。 (簡易な帳簿での記帳、不動産所得が事業的規模に満たない場合、期限後申告など)


改正後の青色申告特別控除の要件(令和9年分以降)

令和9年分以後の所得税申告からは、控除額の枠組みが「75万円、65万円、10万円(条件により0円)」へと再編されます。

要件が細分化されるため、事業者の状況によっては現在の控除額から減額となるケースが発生します。

65万円の青色申告特別控除

改正後の65万円控除は、これまでの「55万円控除の要件」に「e-Taxを使用した電子申告」を追加したものが必須要件となります。

  • 複式簿記による記帳
  • 貸借対照表・損益計算書の添付
  • 期限内申告
  • e-Taxによる電子申告

これまで書面提出で55万円の控除を受けていた事業者が、改正後も書面提出を継続した場合、この要件を満たさなくなり、後述する10万円控除へと適用枠が下がります。

2. 75万円の青色申告特別控除

新たに設けられた最大の控除枠です。

上記の改正後65万円控除の要件(複式簿記+期限内のe-Tax申告)を満たした上で、さらに以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 優良な電子帳簿の要件を満たす保存:仕訳帳および総勘定元帳について、国税の納税義務の適正な履行に資するものとして、一定の要件を満たす電磁的記録の保存等を行っていること。
  • または、特定電子計算機処理システムを使用し、電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、要件に従って保存を行っていること。

「優良な電子帳簿」として認められるためには、訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムを使用し、日付や金額、取引先で検索できる機能を有していることなどが求められます。

なお、この75万円控除の適用を受けるにあたり、所轄税務署長への事前の届出書の提出は不要です。

要件を満たすシステムを使用し、適切に保存等を行っていれば適用対象となります。

10万円の青色申告特別控除(および適用不可となる要件)

複式簿記やe-Taxの要件を満たさない事業者が該当する10万円控除の枠組みについて、新たに収入金額による制限が追加されます。

  • その年の前々年分の不動産所得または事業所得にかかる収入金額が1,000万円以下であること。

前々年の収入金額が1,000万円を超える事業者が簡易な記帳を続けている場合、この10万円の控除も適用されなくなり、控除額は「0円」となります。


控除額が減少する具体的なケース

改正により、実務上、控除額が減少し税負担が増加するケースが想定されます。

書面申告を継続している場合(55万円 → 10万円)

複式簿記で適正に記帳し、損益計算書と貸借対照表を作成しているにもかかわらず、確定申告書を書面で提出しているケースです。

改正後は、書面での提出はe-Tax要件を満たさないため、10万円控除の扱いとなります。

控除額が45万円減少するため、税負担が増加します。

収入1,000万円超で簡易帳簿を利用している場合(10万円 → 0円)

前々年の売上高が1,000万円を超えている事業者で、会計ソフトを使用せず、単式簿記を行っているケースです。

改正後は収入制限の要件に抵触するため、青色申告の承認を受けていても特別控除額は0円となります。


今後の申告に向けて準備すべきこと

改正の適用は令和9年分(2028年の確定申告)からですが、日々の経理方式の移行には時間を要します。

e-Tax(電子申告)の導入

現在、書面で申告書を提出している方は、早期にe-Taxへの移行を行います。

e-Taxの利用にはマイナンバーカードとICカードリーダライタ、もしくは対応したスマートフォンが必要です。

複式簿記への移行と会計ソフトの選定

簡易な帳簿で記帳しており、年間収入が1,000万円に近づいている方は、複式簿記での記帳体制への移行が求められます。

手作業での複式簿記は専門的な知識を要するため、クラウド会計ソフト等の導入が現実的な対応となります。

マネーフォワードおよびTKCシステムの対応状況

最大の75万円控除を適用するためには、使用する会計ソフトが「優良な電子帳簿」等の要件を満たしている必要があります。

当事務所でも採用している「マネーフォワード クラウド確定申告」や「TKC」のシステムは、要件となる「訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)」機能に対応しています。

これらをはじめとしたJIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の認証を受けているソフトであれば、機能面での要件を満たしていると判断できます。

ただし、システムが対応していても、利用者の設定が漏れていると適用されません。

初期設定の段階で、設定画面から「優良な電子帳簿保存を行う」「訂正・削除の履歴を残す」といった該当機能を有効(オン)にしておく必要があります。

機能さえ有効にして要件通りに保存を行っていれば、税務署への届出書の提出は不要です。

令和9年分の適用開始に向けて、現在ご使用のソフトの設定状況を一度見直しておくことをお勧めします。

申告方法や帳簿の作成状況によって、適用できる控除額が明確に区分される制度へと変わります。

現状の経理体制の見直しや、会計ソフトの設定確認は、適用年度が始まる前に行うことを推奨します。

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この記事を書いた人

元・市役所職員の「ひとり税理士」。3児の父。
東京都荒川区在住、東京理科大学大学院修了。
19年間の公務員経験を経て、現在は独立・起業まもない方を中心に、完全オンラインで税務サポートを提供中。

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