東京都内で新たにビジネスを始めようとしている方、または創業して間もない方にとって、非常に魅力的な「創業助成事業」という制度があるのをご存知でしょうか。
この助成金は、返済不要の資金を最大300万円(特定の要件を満たす場合は最大400万円)まで受け取れる可能性がある、創業者にとってまさに恵みの雨のような制度です。
令和7年度の第2回募集が2025年9月29日(月)から10月8日(水)に予定されています。
しかし、この助成金には、多くの人が知らない「扉を開けるための鍵」となるステップが存在します。
その鍵は、あなたの足元、お住まいの市区町村や地域の商工会議所に隠されているのです。
今回は、この東京都創業助成事業を確実に狙っていくための、最も重要なアクションプランを解説します。
申請の要件とは
特に「事前要件」があなたの行動の全てを決めますので、絶対に読み飛ばさないでください。
要件項目 | 内容 |
対象者 | 以下のいずれかに該当する必要があります。 ・都内での創業を具体的に計画している個人 ・法人設立の日から5年未満の中小企業(都内本店) ・開業届の提出日から5年未満の個人事業主(都内納税地) |
事業所の場所 | 法人の本店登記、または個人事業主の納税地が東京都内にあることが必須です。事業の実態が都内にあることが求められます。 |
【最重要】 事前要件 | 申請前に、以下のいずれかの創業支援事業を完了している必要があります。 ・あなたの事業所がある市区町村が実施する「認定特定創業支援事業」 ・地域の商工会議所・商工会等が実施する、それに準ずる支援 |
その他 | 住民税や法人事業税等の滞納がないことなど、基本的な要件も定められています。 |
この記事を読んで「自分も対象かもしれない!」と感じた方が、今すぐやるべきことはたった一つです。
それは、ご自身の事業所がある市区町村のホームページを開き、「認定特定創業支援」と検索すること。あるいは、地域の商工会議所に電話して、助成金の対象となる支援があるか問い合わせることです。
例えば、私の事務所がある東京都荒川区では、以下のようなページがあります。
創業セミナーや個別相談など、自治体によって様々な支援メニューが用意されています。まずはそれを見つけ、申し込み、完了させることが、この巨大なチャンスへの唯一の入口となります。
実は、この助成金を申請するための要件は20あります。
創業助成金の申請要件の全部はコチラ(以下のいずれかを満たすこと)
① 公益財団法人東京都中小企業振興公社(以下「公社」という。)が実施する、TOKYO創業
ステーション「プランコンサルティング」又はTOKYO創業ステーションTAMA「プランコンサルティング」による事業計画書策定支援を終了し、過去3か年の期間内にその証明を受けた方
② 公社が実施する、「東京シニアビジネスグランプリ」において、前年度以前の過去3か年度の期間内にファイナリストまで進んだ方
③ 公社が実施する、「事業可能性評価事業」において、当年度、またはその前年度以前の過去
3か年度の期間内に「事業の可能性あり」と評価され、継続的支援を受けている方
④ 公社が実施する、「若手商人育成事業」における「商店街開業プログラム(商店街起業促進サポート事業)」を当年度、または前年度以前の過去3か年度の期間内に受講修了した方
⑤ 東京都・公社が設置した創業支援施設に入居している方、または以前に入居していた方。なお、該当施設は下記のとおりです。
・ 東京都が設置した施設 東京コンテンツインキュベーションセンター 青山スタートアップアクセラレーションセンター
・ 公社が設置した施設 インキュベーションオフィスTAMA 白鬚西R&Dセンター
⑥ 東京都インキュベーション施設運営計画認定事業の認定を受けた認定インキュベーション施設 (TOKYO創業ステーションHP参照)に、認定後(新設施設は運営開始後)6か月以上継続して入居し、申請を行う事業内容に関する個別具体的支援を、インキュベーションマネージャーから入居期間中に継続して受けている方、または以前に受けていた方
⑦ 独立行政法人中小企業基盤整備機構、都内区市町村、地方銀行、信用金庫、信用組合、国公立大学、私立大学が設置(左記以外の主体との共同設置の場合、左記の主体が発行済み株式総数または出資総額の3分の2以上を所有または出資していること)した都内所在の創業支援施設と、1年間以上の賃貸借契約を締結して入居している方、または過去3か年の期間内に入居していた方
⑧ 青山スタートアップアクセラレーションセンターにおいて、アクセラレーションプログラムを受講している方、または以前に受講していた方
⑨ 東京都が実施する、「TCIC アクセラレーションプログラム(TCIC PitchCampus)」、「TCIC Ideation Program(TCIC IP)」のいずれかに採択された方
⑩ 東京都が実施する、「TOKYO Co-cial IMPACT スタジオプログラム」に採択された方
⑪ 東京都が実施する、「TOKYO STARTUP GATEWAY」において、前年度以前の
過去3か年度の期間内にセミファイナリストまで進んだ方
⑫ 東京都が実施する、「東京都女性ベンチャー成長促進事業(APT Women)」において、国内プログラム(アクセラレーションプログラム)を受講している方、または以前に受講していた方
⑬ 東京都が実施する、「女性・若者・シニア創業サポート事業」、「女性・若者・シニア創業サポート事業
2.0」において、取扱金融機関から当該事業に係る融資を受け、その証明を受けた方
⑭ 東京都中小企業制度融資(創業融資)を利用している方
⑮ 都内区市町村が実施する、中小企業制度融資のうち、創業者を対象とした東京信用保証協会の保証付き
制度融資を利用している方
⑯ 東京都が出資する、ベンチャー企業向けファンドからの出資等を受けている方
⑰ 政策金融機関の資本性劣後ローン(創業)を利用している方
割賦返済ではなく返済期限到来時の一括返済であること、等の特徴があります。
⑱ 産業競争力強化法に規定する認定特定創業支援等事業により支援を受け、過去3か年の期間内に都内区
市町村長の証明を受けた方
⑲ 東京商工会議所、東京信用保証協会、東京都商工会連合会、中小企業大学校東京校BusiNestよ
り認定特定創業支援等事業に準ずる支援を受け、過去3か年の期間内にその証明を受けた方
⑳ 東京都が実施する、「高校生起業家養成プログラム(起業スタートダッシュ)」において、前年度以前の
過去3か年度の期間内に「養成講座」を修了した方
今からでも間に合う!2ヶ月でクリアできる事前要件
「今から(2025年7月25日現在)ではもう間に合わないじゃないか」
募集要項を見て、そう感じた方も多いかもしれません。
しかし、諦めるのはまだ早いです。
これからの約2ヶ月間でクリアできる可能性が非常に高い要件が、ちゃんと存在します。
市区町村・商工会議所の「認定特定創業支援等事業」
これが、今から狙うべき最も確実で現実的な選択肢です。
- 要件18:認定特定創業支援等事業による支援
- あなたの事業所がある市区町村が実施している創業支援です 。多くの場合、「創業セミナー」や専門家による「個別相談」を複数回受けることで証明書が発行されます。まずはご自身の区市町村のホームページで「認定特定創業支援」と検索し、セミナー等の日程を確認してください。
- 要件19:認定特定創業支援等事業に準ずる支援
- 東京商工会議所などが実施している支援です 。こちらも個別相談などで要件を満たせる場合があります。お近くの商工会議所に直接問い合わせてみるのが一番の近道です。
これらの支援は、創業者を後押しするために随時開催されていることが多く、2ヶ月あれば十分に完了を狙えます。この記事を読んだら、今日・明日にでも必ず調べて行動に移してください。
TOKYO創業ステーションの「プランコンサルティング」
- 要件1:プランコンサルティングによる事業計画書策定支援
- TOKYO創業ステーションが実施しているサービスです 。専門家と壁打ちしながら事業計画をブラッシュアップできます。集中的に取り組めば間に合う可能性もゼロではありません。まずはTOKYO創業ステーションに問い合わせて、今から間に合うか相談してみましょう。
- ※募集要項には「概ね3か月程度の時間が必要」と記載があります
助成金の概要
この事前準備の重要性を理解した上で、改めて助成金の魅力的な概要を見ていきましょう。
- 助成対象経費
- 事業に必要な幅広い経費が対象となります。
- 賃借料: オフィスや店舗の家賃
- 広告費: ホームページ制作、チラシ作成、Web広告など
- 器具備品購入費: パソコン、デスク、専門機材など(1点10万円以上)
- 専門家指導費: 税理士やコンサルタントへの報酬
- 従業員人件費
- 事業に必要な幅広い経費が対象となります。
- 助成額と助成率
- 助成限度額: 上限300万円
- 助成率: 助成対象経費の3分の2以内
- (例)助成対象経費が450万円の場合、その3分の2である300万円が助成されます。
- 助成対象期間
- 交付決定日から6ヶ月以上、最長2年間です。この期間内に発生した経費が対象となります。
つまり、事業立ち上げ時の大きな負担となる人件費、家賃、設備投資、広告費などを、最大300万円まで都がサポートしてくれるという、非常に強力な制度です。
採択の割合は?
令和6年度までの申請者数と採択者数をみると概ね採択率が15%と言えそうです。
年度 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
申請者数 | 863 | 600 | 808 | 1,037 | 1,140 | 1,210 | 1,060 | 1,053 |
採択者数 | 115 | 151 | 152 | 156 | 157 | 162 | 157 | 208 |
採択率 | 13.3% | 25.2% | 18.8% | 15.0% | 13.7% | 13.3% | 14.8% | 19.7% |
助成の対象幅や金額の大きさから、人気の助成金なのが分かります。
申請の要件をクリアしてもしっかりとした計画を作らないと採択されにくくなっています。
活用事例
では、具体的にどのような業種で、どのように活用できるのでしょうか。4つの例を挙げてみます。
- 学習塾
- 駅前の教室用テナントの賃借料は大きな負担です。この家賃の3分の2が助成されるのは非常に大きいでしょう。また、生徒募集のためのホームページ制作費や広告費、さらにはプロジェクターや生徒用の机・椅子といった器具備品購入費も対象になります。実際に、この助成金を活用して事業を軌道に乗せた学習塾の事例もあります。
- 不動産賃貸業・仲介業
- 事務所の賃借料はもちろん、顧客を集めるための物件情報サイトへの広告掲載料や、自社ホームページの構築費用も広告費として申請可能です。お客様との契約に使用するパソコンや、事務所のデスク、応接セットなども器具備品購入費として活用できます。
- 飲食店
- 店舗の賃借料に加え、オープンを告知するためのチラシ作成やグルメサイトへの広告費が対象になります。厨房設備やPOSレジシステムなども器具備品購入費として認められる可能性があります。初期投資がかさむ飲食店にとって、大きな助けとなるでしょう。
- サウンドエンジニア(フリーランス)
- フリーランスのサウンドエンジニアとして独立する場合、自宅兼事務所の家賃の一部を賃借料として計上できる可能性があります。また、自身のスキルや実績をアピールするためのポートフォリオサイト制作は広告費に、高品質なミキサーやマイク、スピーカーといった音響機材は器具備品購入費として申請することが考えられます。
まとめ
東京都の創業助成事業は、創業者にとって夢のような制度ですが、その扉を開ける鍵は、あなたの身近な場所にあります。
この記事を読んで少しでも可能性を感じたなら、あなたのやるべきことは明確です。
今すぐ、ご自身の地域の「認定特定創業支援事業」を調べてください。そして、すぐに申し込んでください。
「知っているか、知らないか」ではありません。「行動したか、しなかったか」が、あなたの事業の未来を大きく左右します。このチャンスを逃さず、あなたのビジネスを力強くスタートさせましょう。
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