【2026年最新版】ひとり社長の役員報酬の決め方。事前確定届出給与を活用した社会保険料削減

荒川区の税理士、岡崎友彦です。

法人決算期において、ひとり社長が直面する最大の経営課題が「次期の役員報酬額の決定」です。

役員報酬の設定を誤れば、税金と社会保険料により法人の資金と個人の手元資金が大きく減少します。

本記事では、社会保険料の負担増を踏まえた役員報酬の最適な決定ルールと、「事前確定届出給与」を活用した手残り最大化のアプローチを解説します。

目次

絶対に守るべき「役員報酬」3つの鉄則

役員報酬を法人の経費(損金)として計上するためには、税務ルールを守る必要があります。

  1. 「定期同額給与」の原則毎月同一の金額を支給する必要があります。月によって支給額を変えた場合、変動した部分は損金として認められず、法人税の課税対象となります。
  2. 決議期限は期首から3ヶ月以内事業年度開始の日から3ヶ月以内に、株主総会(ひとり社長の場合は自身の決議)で年間の報酬額を決定し、議事録を作成・保管します。
  3. 期中の金額変更は原則不可一度決定した役員報酬は、事業年度の途中で変更できません。業績悪化を理由とした減額には「業績悪化改定事由」などの極めて厳格な要件を満たす必要があります。

役員報酬を高く設定する「社会保険料の罠」

役員報酬を決定する際、多くの経営者が陥るのが社会保険料の罠です。

所得税は累進課税ですが、現在それ以上に経営者を苦しめているのが社会保険料です。

労使折半で約30%の負担となりますが、ひとり社長の場合、会社負担分も個人負担分も実質的な出どころは同じ「会社の財布」です。

かつて主流であった「法人の利益を圧縮するために役員報酬を高く設定する」手法は、社会保険料の急増を招き、結果としてトータルの手残りを減らす悪手となります。

法人税率と社会保険料率の損益分岐点を見極めることが必須です。

3. 最適化アプローチ:「事前確定届出給与」の活用

社会保険料を合法的に削減し、手残りを最大化する強力な手法が「事前確定届出給与」の活用です。

事前確定届出給与とは

所定の時期(原則として株主総会から1ヶ月以内等)に、「いつ」「いくら」支給するかを税務署へ事前に届け出ることで、役員への賞与(ボーナス)を法人の損金に算入できる制度です。

社会保険料削減のメカニズム

社会保険料には、賞与に対する賦課上限(標準賞与額の上限)が存在します。

  • 厚生年金保険料の上限: 1回の支給につき150万円
  • 健康保険料の上限: 年間累計573万円

この上限規定を利用し、「毎月の役員報酬(定期同額給与)を低く抑え、年収の大部分を事前確定届出給与(賞与)として1回で支給する」スキームを組みます。

上限を超えた賞与部分には社会保険料がかからないため、年収が同額であっても、月額で平準化して受け取るより社会保険料総額を大幅に削減できます。

【試算】年収1,200万円の比較シミュレーション

以下の表は、同じ年収1,200万円でも、支給方法によって社会保険料がどう変わるかの目安です。(※金額は概算であり、自治体や年齢により変動します)

支給パターン内訳社会保険料(年間概算・労使合計)
全額月額報酬月額100万円約330万円
事前確定届出給与活用月額10万円 + 賞与1,080万円約130万円

支給割合を変えるだけで、年間約200万円もの社会保険料を防ぐことが可能です。

法人の利益還元と個人の生活費確保を両立する最適解と言えます。

【要注意】事前確定届出給与の致命的なリスク

このスキームは極めて強力ですが、運用を誤ると致命的なペナルティを負います。

  • 1円、1日のズレも許されない: 届け出た「支給日」または「支給額」と実際の支給内容が完全に一致しなければ、賞与全額が損金不算入となります。多額の法人税が課されることになります。

さらなる手残り最大化:節税の合わせ技

役員報酬の最適化に加え、以下の制度を併用することでスキームはより強固になります。

  • 出張旅費規程の導入:役員報酬(月額)を極限まで下げた場合の日常的なキャッシュ不足は、出張旅費規程による「日当」で補填します。日当は非課税であり、社会保険料の算定基礎にも含まれません。
  • 小規模企業共済の活用:掛金が全額所得控除となります。将来の退職金を非課税枠(退職所得控除)で受け取るための必須ツールです。退職所得控除は加入期間に比例して枠が拡大するため、月額1万円の少額設定であっても、法人設立直後から加入し、期間を稼ぐことを推奨します。

まとめ

ひとり社長の役員報酬決定は、「定期同額給与」と「事前確定届出給与」の適切な配分が鍵を握ります。

社会保険料の上限規定を突いたこのスキームは手残りを劇的に増やしますが、1円の狂いも許されない厳格な資金繰り管理が前提となります。

「自社の場合、月額と賞与のバランスをどう設定するのが最適か」「資金繰りに耐えうるか」をご判断するためには、専門家による詳細なシミュレーションが必要です。

当事務所では、経営状況に応じた安全で確実な役員報酬設定をサポートいたします。ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

元・市役所職員の「ひとり税理士」。3児の父。
東京都荒川区在住、東京理科大学大学院修了。
19年間の公務員経験を経て、現在は独立・起業まもない方を中心に、完全オンラインで税務サポートを提供中。

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