荒川区の税理士、岡崎友彦です。
2026年9月4日から17日まで、荒川法人会主催「初級簿記講習会」の講師を務めました。
全8回、各回2時間です。本記事では講義の工夫と教室の様子を振り返り、配布したプリントをPDFで公開します。
社員研修や学び直しの参考になれば幸いです。

受講者は簿記未経験の方が中心
受講者は約15名。経理担当者のほか、営業や広報のご担当者、新任役員の方も参加されました。
簿記に初めて触れる方が大半です。
数字を把握すべきなのは経理担当者だけではありません。
営業担当者は売掛金と回収条件の重みを知る。
総務担当者は領収証の宛名とインボイス登録番号の意味を知る。
経営者は試算表を見て現状をつかむ。この共通理解があると、社内の意思疎通が速くなります。
そのため今回は、日商簿記3級の試験対策ではなく「明日の実務で使う」ことを目的にしました。
丸暗記はさせず、ホワイトボードで取引の全体像を描くことに時間を使っています。
「5つの箱」で暗記をなくす
簿記でつまずく原因は、借方(左)と貸方(右)の暗記です。毎回、ホワイトボードの右上にこの図を描きました。
| 資 産 | 負 債 |
| 資 本 | |
| (利 益) | |
| 費 用 | 収 益 |
P/Lで計算した利益は、B/Sの資本(繰越利益剰余金)に流れ込みます。この位置関係を覚えれば、勘定科目の暗記は不要です。
- 資産:手元の現金、持っている物、後で受け取る権利
- 負債:後で支払う義務、預かった税金
- 収益:「受取○○」と付くもの
- 費用:「○○費」「支払○○」と付くもの
毎回の講義冒頭に「どの箱に入るか」を答える確認テストを行い、この型を体に染み込ませました。
全8回のカリキュラム
前半(第1〜4回):日々の取引と仕訳
会社の設立、借入、商品売買の三分法、小切手と当座預金、売掛金・買掛金の決済、給料から天引きする源泉所得税、消費税の税抜処理を扱いました。
例:従業員の給料180,000円を現金で支払った。
(借方)給料 180,000 /(貸方)現金 180,000
例:借入金50,000円を利息2,000円とともに現金で返済した。
(借方)借入金 50,000、支払利息 2,000 /(貸方)現金 52,000
左右の合計は必ず一致します。この複式簿記の原理を、手を動かして体感していただきました。
中盤(第5〜6回):会社の書類から仕訳を作る
教科書の問題文ではなく、会社の現場にある書類で演習しました。通帳の明細を見て相手科目を判断する。領収証と請求書の宛名・日付・登録番号を確かめてから仕訳を切る。1か月分の仕訳を集計して残高試算表を完成させる。「経理に出していた領収証の意味が分かった」という声をいただいたパートです。
後半(第7〜8回):小さな会社の決算を一巡する
架空の会社「荒川商事株式会社(3月決算)」を題材に、決算整理から損益計算書・貸借対照表の完成までを通しで行いました。
- 倉庫の在庫を数え、「し・くり・くり・し」の仕訳で売上原価を確定する
- 固定資産台帳から、減価償却費を月割りで計算する
- 売掛金残高一覧から回収の遅れている先を確かめ、貸倒引当金を計上する
- 翌期分の家賃を前払費用に振り替える
損益計算書と貸借対照表の当期純利益200,000円が一致した瞬間、教室に納得の表情が広がりました。会計ソフトが裏側で行う処理を、自分の手で再現できた瞬間です。
配布プリント(PDF)
講習会で配布したプリントです。社員研修や復習にご利用ください。
- 第1回 簿記で学ぶこと・日々の帳簿記入(講義資料)/仕訳トレーニング10題
- 第2回 商品売買 確認テスト+講義資料
- 第3回 現金・預金 確認テスト
- 第4回 その他の資産・負債 確認テスト+自習10問
- 第5回 株式会社の資本・訂正仕訳 確認テスト+自習10問
- 第6回 帳簿・証ひょう・試算表 確認テスト+実務演習
- 第7回 決算Ⅰ 確認テスト+実務演習(棚卸・固定資産台帳・売掛金一覧)
- 第8回 決算Ⅱ 確認テスト+最終演習(損益計算書・貸借対照表)+解答
教材は「大原で合格る。日商簿記3級」(大原出版)を使用しました。プリントの転載はご遠慮ください。社内研修での利用は自由です。
簿記は「共通の会計用語」
最終回のプリントの結びにも書きました。簿記は経理の計算技術ではなく、業種や会社の枠を越えて通じる会計用語です。
取引 → 仕訳 → 帳簿・試算表 → 決算整理 → 損益計算書・貸借対照表
この流れが頭に入ると、顧問税理士との決算や節税の相談で意図が正確に伝わります。金融機関に試算表を出すとき、数字の背景を説明できます。「経費を10万円使う」「売掛金の回収が1か月遅れる」ことの重みも分かります。
2時間×全8回を完走された受講者の皆様に、心より敬意を表します。
まとめ
今回の講習会は、税務・会計の仕組みを噛み砕いて伝える力を磨く機会になりました。
税理士の基本は正確な税務申告です。それに加えて、経営者と社員が自社の数字を理解し、自走できるよう後押しすることも、地域に根ざす税理士の役割だと考えています。
当事務所では、税務相談のほか、社内向けの経理研修やクラウド会計(マネーフォワード クラウド、TKC等)の運用レクチャーも承っております。
自社の数字管理に課題を感じている方は、お気軽にご相談ください。

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