源泉所得税(納期特例)と特別徴収(住民税)の違いと6月・7月の対応

荒川区の税理士、岡崎友彦です。

毎年6月から7月にかけて、事業主は従業員の給与から控除する「源泉所得税」と「住民税」に関する手続きを行います。

本記事では、法人および個人事業主を対象に、

  • 「源泉所得税(納期の特例)」と「住民税(特別徴収)」の制度上の違い
  • 事業主が行うべき実務手続き
  • およびシステム活用による業務効率化の手法

を解説します。

目次

源泉所得税(納期特例)と特別徴収(住民税)の制度の違い

両者は給与から税金を天引きして納付する制度です。

しかし、管轄する機関、税額の計算機関、納付時期が異なります。

1. 源泉所得税(納期の特例)

源泉所得税は国税です。事業主が給与計算を行う際、国税庁の税額表に基づき税額を計算し、給与から天引きします。

原則として、天引きした源泉所得税は翌月10日までに税務署へ納付する義務があります。

ただし、給与の支給人員が常時9人以下の事業所は、事前に税務署へ「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出し承認を受けることで、納付を年2回にまとめることが可能です。

  • 上半期分(1月~6月支給分):7月10日納付
  • 下半期分(7月~12月支給分):翌年1月20日納付

特例の対象となるのは、給与や退職金から徴収した所得税、および税理士や弁護士等の専門家報酬から徴収した所得税です。

2. 特別徴収(住民税)

住民税は地方税(都道府県民税および市区町村民税)です。

前年の所得を基に各市区町村が税額を計算します。

事業主(特別徴収義務者)は、市区町村から通知された決定税額を従業員の給与から天引きし、各自治体へ納付します。

住民税の年度は6月に切り替わります。毎年5月に各市区町村から「特別徴収税額決定通知書」が送付され、6月支給分の給与から新しい税額での天引きを開始します。

納付期限は、天引きした月の翌月10日です。

住民税にも納期の特例(年2回納付)の制度が存在します。

従業員が常時11人未満の事業所が対象となり、所得税の特例とは別に、対象となる各市区町村へ個別に承認申請書を提出する必要があります。

制度の比較表

項目源泉所得税(納期の特例)住民税(特別徴収)
税種国税地方税
管轄税務署従業員が1月1日に居住する市区町村
税額計算事業主(給与計算時に算出)市区町村(前年所得に基づき算出)
納付期限(原則)翌月10日翌月10日
納期特例の要件従業員常時9人以下従業員常時11人未満(自治体により要件確認)
納期特例の期限7月10日、1月20日12月10日、6月10日(一般的な設定)

6月および7月に事業主が行うべき実務手続き

事業主は以下のスケジュールで作業を完了させる義務があります。

(6月)住民税の年次更新作業

  1. 通知書の確認:5月中に各市区町村から送付される「特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用および納税義務者用)」の記載内容を確認します。
  2. 従業員への交付:納税義務者用(従業員用)の通知書を各従業員に配付します。
  3. 給与計算の控除額変更:6月支給分の給与計算において、住民税の控除額を通知書に記載された新しい金額に変更します。
  4. 納付:6月に天引きした住民税を、7月10日までに各市区町村へ納付します。

(7月)納期特例にかかる源泉所得税の集計と納付

  1. 対象期間の集計:1月から6月までに支給した給与、賞与、および税理士報酬等の支払額と、天引きした源泉所得税額を集計します。
  2. 納付書の作成:「所得税徴収高計算書(納付書)」に集計した支払額と税額を記入します。
  3. 納付:7月10日までに金融機関または税務署で納付します。
  4. ※対象期間内の源泉徴収税額が0円であった場合でも、納付額0円として納付書の提出手続きが必要です。

期限後納付に関する事実

納付期限を超過した場合、附帯税が課されます。

源泉所得税では不納付加算税(原則として納付すべき税額の10%)や延滞税が発生します。住民税においても各市区町村の条例に基づき延滞金が加算されます。

これらの附帯税は法人の損金(経費)および個人事業主の必要経費には算入できません。

手続きの効率化とシステム活用

従業員数が増加するにつれて、紙の納付書を用いた手作業は工数が増大し、計算ミスや納付漏れのリスクが高まります。

以下の方法による業務フローのデジタル化が有効です。

1. 給与計算・会計システムの導入

クラウド型の給与計算ソフト(TKCシステムやマネーフォワード等)を導入します。

所得税については、社会保険料控除後の金額や扶養親族情報に基づき、システムが自動で源泉徴収税額を計算します。住民税については、市区町村から通知された年間の税額データをシステムに入力または取り込むことで、毎月の給与から該当月の税額が自動控除されます。

これらの給与システムを会計ソフトと連携させることで、給与支払時の仕訳や、7月・1月の納期特例に伴う半期分の源泉所得税の集計作業が自動化されます。

2. 特別徴収税額決定通知書の電子データ受取

市区町村からの住民税決定通知書を、書面ではなく電子データ(eLTAX経由)で受け取る設定に変更します。

自治体の税務窓口からの書面郵送を待つ必要がなくなり、取得したデータを給与計算システムへ直接取り込むことが可能となります。手入力による転記ミスを防止できます。

3. 電子申告および電子納税の利用

金融機関の窓口での納付手続きを廃止し、電子システムを利用します。

  • 源泉所得税(国税)e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用して「所得税徴収高計算書」のデータを送信します。ダイレクト納付(事前に登録した口座からの引き落とし)やインターネットバンキングを利用して納税を完結させます。
  • 住民税(地方税)eLTAX(地方税ポータルシステム)を利用します。以前は各市区町村の指定する納付書を金融機関へ持ち込む必要がありましたが、eLTAXの「地方税共通納税システム」を利用することで、複数の市区町村に対する特別徴収住民税を一括して電子納付することが可能です。

まとめ

6月から7月にかけて、事業主は地方税である住民税の年度更新と、国税である源泉所得税の半期分の納付処理を行います。

管轄機関、税額計算の根拠、納付期限の違いを区別し、所定の期日までに手続きを完了させる必要があります。

手作業に依存した処理フローを見直し、給与計算システム、e-Tax、eLTAXを連携させることで、業務工数の削減とミスの防止を図る措置を講じてください。

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この記事を書いた人

元・市役所職員の「ひとり税理士」。3児の父。
東京都荒川区在住、東京理科大学大学院修了。
19年間の公務員経験を経て、現在は独立・起業まもない方を中心に、完全オンラインで税務サポートを提供中。

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